イタリア語講座で

イタリアに来てすぐに、イタリア語の基本を習うため、市でやってる授業料無料の外国人のためのイタリア語講座に通うことにした。週に2回午前中の2時間だけ行ってたけど、わちきの先生が、”もしよければ、毎日あるから毎日来てもいいよ”と言ってくださった。しかしわちきは、”いいえ、いいです、2回で”としっかり断った。
実は、わちきは短大で声楽を勉強しててイタリア語のアリアとか歌ってた。音楽用語はほとんどイタリア語なので、少しは馴染みがあるのだが、大きな問題は、わちきはイタリアが好きじゃない、むしろ嫌っていたのでここに住む気もなかったし、昔からヨーロッパ旅行したかったけどイタリアは全く頭になかったくらいだ。だからここに住み始めて、イタリア語を聞くのも読むのも勉強することも好きになれなかった。でも、住むからにはわからないといけないから止むを得ず習い出したので、講座は1週間に2回でもう疲れていた。半年通って、講座が終わったが、生活で話したり、理解するにはまだまだだった。義理のお母さんが、もう行かないのか、と言ってきたが、行かない!と返した。
もともと語学のセンスが全くない私は、普通の人よりものになるのが遅かった。ましてや、嫌いな国だったので余計に遅かったと思う。


そんなわちきが、約10年も経ち、ある程度イタリア語で生活できるようになってた頃、もう1度講座に参加して正しいイタリア語を習得しよう、という気になり通い始めた。最初に行った所は1時間かけて行ったが、この時は30分ぐらいの前とは別の所に通った。


今回は中級クラスに入ったのだが、その先生は宿題を毎回出す先生で、毎回違うタイトルを出し、それについて自由に書くことだった。今でも覚えてることがあるのだが、イタリアと自分の国の違いについて書く宿題だった。いっぱい考えたので覚えてるのだ。
最初書き始めた時は、もうイタリアに対しての違いを考えてると、それが全て不平不満に繋がり、こんなことを書いてたらきりがないと考え直し、その時感じてた、ひとつだけイタリアに対して日本とは違う、イタリアに対して尊敬することを書いた。


それは、その時日本のニュースで自殺者の低年齢化か言われてた。私もイタリアにいてそのことに大きくショックを受け、色々考えさえられてた。インターネットで世界の国の自殺者の年齢層を調べたり、色々状況を少し調べてみてた。
その当時、イタリアに住んでて自殺したというニュースをテレビで聞くことはほとんどなかった。主人に聞いても同じ。それでは、なぜか、ということを色々考えさえられ、私が出した答えのひとつは教育問題、そして、もうひとつは、家族の繋がり。
イタリアは、カトリックが国教なので、ベースにカトリックの教えがある。小学校から神様、イエス様がどれだけ人を愛しているかを教えられる。そして、みんな兄弟姉妹ということを習う。もちろんこれは小学校からの宗教学でも軽く習うけど、学校とは別にカテキズムと言って、カトリックの教義、伝統をカトリック教会で、5歳から13歳ぐらいまで、わかりやすく教える。もちろん自由参加だが、イタリア人の家庭はほとんどこれに子供達を送る。だから、これによって、時代が変わっても、どんなに自分が間違いを犯したとしても、どんなに孤独でも、自分は許されてるし、自分をわかってくれて、変わらない愛で自分を愛してくれてる存在がいる、ということを教えられる。


日本は、私の時代には、道徳があって人を敬うことを自然と教えられ、御墓参りや、先祖を大切にする習慣が強かったけど、これによって自分は自分だけの私物ではなく、先祖からきてることを、また、先祖が共にいることを感覚的に教えられてたと思う。でも、それがだんだん薄れてると思った。
それに昔は、家族の中での接触というか、会話が今より多かったと思う。今は仕事の関係で家族が揃うことが少ないこともあるだろうし、家の作りが昔とは違うのもあると思う。昔は個人個人の部屋なんてあまりなかったし、携帯とかもないから、家庭の中で家族同士が一緒にいることが多かったと思う。だから、面と向かって言いたいこと言って、喧嘩して、仲直りして、ってやってたと思う。そうやって、家族愛を実感し、家族の一員であることを感じていたと思う。でも今は、家族に対する思いやりは同じだと思うけど、昔と接し方が、また、考え方が違ってきて、個人主義の傾向が強いから、家族の中での自分の価値を深く感じることができないのではないかと思った。


イタリアは、昔も今も変わらず、家族関係がすごい強い。家族を思う気持ちの表現が言葉や態度で表すし、それぞれの部屋があるけど、個人部屋は少し大きくなって勉強に少し使ったり、友達と遊んだり、寝るだけ。あまり使わない。年頃になっても、自分の部屋にこもることはあまりないような気がする。大きな連休になれば、必ずと言っていいほど、離れてても実家にみんな集まる。だから、自分は大切な家族の一員、自分を愛してくれてる家族がいる、ということが心に刻まれてると思った。
世界で自殺者の多い国は、宗教を持たない国、または、共産主義教育のところが圧倒的上位を占める。


と、そんなことを色々考えて、イタリア語でなるべくシンプルに書いて提出した所、先生の添削が終わって返された時に、イタリア語はいまいちだけど、内容は素晴らしかった、とお言葉を頂いた。


残念ながら、今のイタリアも宗教の限界、家族の崩壊が増えてきて、少しずつ自殺者が増えてきてる今日です。